2020年の阪神を振り返って
半年も更新を怠った上に,年越しギリギリの更新になりました.
今年はCOVID-19の流行により,大きな変化が起きた.これはプロ野球にも影響を及ぼすことになり,ペナントレースの開幕が6月まで遅れた.その他にも,クライマックスシリーズの縮小,外国人選手の登録が5人まで認められる,延長が10回で打ち止めになるなど,今年は例年と異なったシーズンを迎えることとなった.
それでは早速2020年の阪神を振り返っていこう.今年の阪神は60勝53敗7分,15年連続でリーグ優勝は逃したが,2位になった.これで矢野政権が始まって2年連続のAクラス入りとなった.
ここからは,野手と投手,そして来年度に向けた展望に分けて述べていく.
野手
まずは今年のベストオーダーを私の独断で決定した.
打順 | 守備 | 選手名 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 失策 | 試合 | memo |
1 | 中 | 近本 | 0.293 | 9 | 45 | 31 | 3 | 120 | 2年連続の盗塁王.開幕当初は深刻な不調に陥ったものの,2年目は前年を上回る成績を残した. |
2 | 二 | 糸原 | 0.294 | 3 | 20 | 1 | 1 | 63 | ドラ5の社卒.戦線離脱しにくいのが長所だったが,ついに今年はジョーシンの呪いを受けてしまった. |
3 | 左 | サンズ | 0.257 | 19 | 64 | 2 | 2 | 110 | 得点圏に滅法強かった.亜細亜大学出身の投手からよく打つことから「亜大絶対殺すマン」と呼ばれたことも. |
4 | 三 | 大山 | 0.288 | 28 | 85 | 1 | 6 | 116 | 開幕スタメンは逃したが,覚醒の兆しを思わせる活躍だった.球界を代表する選手入りも遠くない. |
5 | 一 | ボーア | 0.243 | 17 | 45 | 1 | 8 | 99 | ファイヤーボールでファンを沸かせるパワーヒッター.高給ゆえに1年でクビになったのが惜しまれる. |
6 | 右 | 陽川 | 0.247 | 8 | 24 | 2 | 1 | 71 | ゴリラポーズでおなじみの長距離砲.バナナはあまり好きじゃないらしい. |
7 | 捕 | 梅野 | 0.262 | 7 | 29 | 5 | 4 | 98 | 虎の正捕手.球界随一の壁性能で投手をサポートする. |
8 | 遊 | 木浪 | 0.249 | 3 | 25 | 2 | 8 | 92 | 遊撃手1番手.前年と比べて守備が改善したように見られた. |
9 | 投手 |
野手に関しては,なんといっても近本と大山の活躍が素晴らしかった.近本は2年連続で盗塁王になった上に,前年の課題であった盗塁成功率でも改善が見られた*1.来年こそは2桁本塁打を達成してほしい.
大山は打率.288,28本塁打,85打点とプロ4年間で過去最高の成績を残した.タイトルを逃したのは残念だったが,やっと阪神の生え抜きからも球界を代表するような選手が出てきた.まさか阪神から,しかも外国人ではなく生え抜きの打者が本塁打王争いに食い込めるとは予想さえしていなかったので,今年はペナント最終盤まで楽しめた.阪神は長らく野手の育成が下手だというイメージがつきまとっていた印象だったが,ようやく払拭に成功したのではないかと思う.個人的には,相手投手が大山の前後を打つサンズとボーアからの一発を警戒し,大山とも勝負せざるを得なくなったからなのではないかという見方もあると思うが,勿論本人の飛躍的な成長なくしてこれだけの成績を残すことは出来なかっただろう.
クリーンアップの打撃成績(2019年)
打順 | 選手名 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
3 | 糸井 | 0.314 | 5 | 42 | 0.819 |
4 | 大山 | 0.258 | 14 | 76 | 0.713 |
5 | 福留 | 0.256 | 10 | 47 | 0.741 |
クリーンアップの打撃成績(2020年)
打順 | 選手名 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
3 | サンズ | 0.257 | 19 | 64 | 0.814 |
4 | 大山 | 0.288 | 28 | 85 | 0.917 |
5 | ボーア | 0.243 | 17 | 45 | 0.760 |
続いてベストオーダー以外の主な野手についての成績を取り上げる.
選手名 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 失策 | 試合 |
糸井 | 0.268 | 2 | 28 | 2 | 2 | 86 |
福留 | 0.154 | 1 | 12 | 0 | 1 | 43 |
マルテ | 0.252 | 4 | 14 | 1 | 8 | 29 |
原口 | 0.278 | 3 | 19 | 0 | 0 | 48 |
植田 | 0.153 | 0 | 3 | 9 | 5 | 74 |
小幡 | 0.220 | 0 | 7 | 3 | 9 | 54 |
今年は外野で世代交代が起こった.昨年2019年までは糸井と福留のロートルが両翼を担っており,早急な若返りが求められていた.今年は両選手の不調もあったが,サンズの抜擢や陽川の確変もあり,世代交代に成功した.
一方で課題もみられた.3年連続で12球団最多失策だった.流石に2年連続で100失策を記録するという不祥事は免れたが,120試合で85失策はいくら何でも多すぎる*2.これに関しては,阪神では1人の選手に対して1つのポジションに集中して守らせるのではなく,いくつかのポジションを兼任させることを重視しているように見えるが,これこそが最大の元凶なのではないか.
1人の選手が複数のポジションをこなせると,スタメン争いに負けたときに別のポジションで守ることが出来たり,試合の後半で守備固めが出来たりなどのメリットがあるため,この考え方そのものは悪くない.しかし,阪神の大半の選手はメインのポジションでさえろくに守れないのが現状である.まずは1つのポジションをきちんとこなせるようにしてほしい.
今年は,1人の選手に複数のポジションを守らせるといったケースが多かった.これに関して最も被害を受けたのが大山で,彼は本職のサードの他に,ファースト,レフト,センター,ライトでの出場記録があった.個人的には,大山はサードに固定すべきだと強く言いたい.また,守備固めできる選手がおらず,途中出場した選手がろくに守れなくて決勝点を失うパターンもよくあった.個人的にはセカンドの守備が糸原から植田に交代したときに,解説で出演していた権藤さんが「下手から下手に変わった」と発言していたのが印象に残っている.植田,熊谷,島田は打てないくせに守れない.しかも盗塁や走塁も下手だし救いようがない.熊谷に至ってはこの体たらくで何故背番号4番を背負っているのか最早意味不明である.来年は彼らの顔はもう見たくない.
悪い点だけ取り上げるのも酷な話なので,良かった点も挙げておく.守備に関して改善がみられた選手もいる.近本は今年で大きく守備能力を向上させた.大山は確実性を求めようとして守備範囲が狭くなったように映ったが,前年の20失策から6失策まで大幅に改善された.木浪は2年目で甲子園にある程度慣れたおかげもあるかもしれないが,失策数は前年の15失策から8失策へと半減した.
投手
選手名 | 防御率 | 勝利 | 敗戦 | HP | セーブ | 奪三振 | 投球回 | WHIP | 失策 | 登板 |
西 | 2.26 | 11 | 5 | 0 | 0 | 115 | 147.2 | 0.98 | 2 | 21 |
青柳 | 3.36 | 7 | 9 | 0 | 0 | 88 | 120.2 | 1.28 | 1 | 21 |
秋山 | 2.89 | 11 | 3 | 0 | 0 | 64 | 112 | 0.97 | 2 | 18 |
髙橋 | 2.49 | 5 | 4 | 0 | 0 | 75 | 76 | 1.11 | 0 | 12 |
岩貞 | 3.30 | 7 | 3 | 13 | 0 | 63 | 71 | 1.27 | 2 | 38 |
藤浪 | 4.01 | 1 | 6 | 7 | 0 | 85 | 76.1 | 1.45 | 2 | 24 |
岩崎 | 1.82 | 5 | 2 | 22 | 2 | 37 | 39.2 | 1.03 | 1 | 41 |
馬場 | 2.08 | 2 | 1 | 11 | 0 | 27 | 30.1 | 1.45 | 2 | 32 |
ガンケル | 3.18 | 2 | 4 | 13 | 0 | 39 | 56.2 | 1.18 | 0 | 28 |
エドワーズ | 2.38 | 0 | 1 | 12 | 0 | 17 | 22.2 | 0.88 | 0 | 23 |
スアレス | 2.24 | 3 | 1 | 11 | 25 | 50 | 52.1 | 1.05 | 1 | 51 |
西はキャリアハイとなる11勝をマーク.秋山は得意の広島相手に勝ち星を稼ぎ,2017年以来3年ぶりとなる2桁勝利を記録した.青柳は負け星が先行したものの,先発ローテーションを守り切り,2年連続で規定投球回に到達した.髙橋はコンディション不良で開幕に間に合わなかったが,菅野相手に勝ち星を挙げるなどの好投を見せた.
岩貞はシーズン途中から中継ぎ転向したが,チーム3位となる7勝をマーク.藤浪は先発で不振だったが,様々な事情が重なってまさかの中継ぎ登板を果たした.先発に再度転向してからは14イニング連続無失点と復活の兆しを見せた.岩崎は開幕戦で印象を悪くしたが,最終的には2年連続で防御率1点台の成績を残した.馬場は広島戦でピンチを抑えたときのガッツポーズが印象的だった.
スアレスは前年ホークスを退団したが,1年でセ・リーグのセーブ王まで上り詰めた.トミージョン手術から2年が経過していた,藤川の不調など様々な要因が重なったとはいえ,ここまで活躍するとは予想外だった.掘り出し物を当てたような感覚である.
投手全般に言えることは,失策が多かった.2020年の阪神は85失策を記録したが,この内の2割に相当する17失策は投手が記録したものであった.失策が失点につながることも少なくないだけに,正直これは残念に感じた.
契約更改と新戦力
今年は結果の残せなかったベテラン勢にとって厳しい契約更改となった.成績を残せなかった藤川は現役引退し,福留,能見,上本は退団となった.なお,福留は中日,能見はオリックスへの移籍が発表されており,上本は現役引退することが先日報道された.
ドラフトでは将来性に期待できる佐藤を4球団競合の末に獲得し,それ以外にも投手や捕手,遊撃手候補の確保に成功した.正直ドラフト関係はあまり詳しくないので割愛させていただくが,ドラフトの評価を下すには少なくともプロ入りから3年は待つべきだと思うので,今回は省略する.
外国人については,一定の成績を残したサンズは残留したが,高給に見合わなかったボーアは1年でクビになってしまった.一方でスアレスはメジャーとの争奪戦が懸念されたが,スアレスの残留に成功したのは阪神にとって最大の補強であることは言うまでもないだろう.韓国からロハスとアルカンタラを補強し,更にロッテを退団したチェンも迎えることに成功した.数年前までは野手を1人補強してハイ終わりというのが普通だったが,近年は外国人を複数確保することで,シーズン中に慌てて補強するといったことがなくなったのは良いと思う.
2021年に向けて期待すること
なんといっても16年ぶりのリーグ優勝&36年ぶりの日本一だろう.しかし,今年は首位の讀賣に対して8勝16敗と大幅に負け越してしまった.阪神の選手が讀賣に苦手意識を抱いているかもしれないが,これは非常に不味い.讀賣のエース菅野がメジャー挑戦で来年はいなくなる可能性があるので,これ以上ない大チャンスだと思う.さらに,外国人の補強も行い,フロントとしては日本一に向けてこれ以上ない準備を行ってきたように思える.来年は矢野監督の任期最終年ということもあって,阪神の明暗は監督の手腕にかかっているだろう.自分としてはとにかく日本一になってほしい.流石に球団創設86年で1度しか日本一になっていないのはシャレにならないので.
以上で2020年最後の更新とさせていただきます.
2020年も1年間ありがとうございました.来年もよろしくお願い申し上げます.